2015年4月15日水曜日

原マスミ「歌と朗読」が開かれました。 JIKE STUDIO 横浜市青葉区寺家町 寺家ふるさと村 ギャラリー カフェ



今展の絵画を描いている原マスミさんは
ミュージシャンとしても長年活動されています。

アコーディオン・熊坂路得子


「人間の秘密」「海のふた」「それぞれボレロ」・・
  

最後に、朗読が行われました。



わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、

きれいにすきとおった風をたべ、

桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。

 またわたくしは、はたけや森の中で、

ひどいぼろぼろのきものが、

いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、

宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。

 わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。

 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、

虹や月あかりからもらってきたのです。

 ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、

十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、

もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。

ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、

わたくしはそのとおり書いたまでです。

 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、

ただそれっきりのところもあるでしょうが、

わたくしには、そのみわけがよくつきません。

なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、

そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾いくきれかが、

おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、

どんなにねがうかわかりません。


大正十二年十二月二十日

宮沢賢治


JIKE STUDIO

http://tsuki-zo.jp/jike-studio/index.html